昨日は、美容院へ行ったという母に会うのを楽しみにしながら実家に向かった。
『お母さん素敵じゃん!』とおだてて、これからも定期的に自分で美容院へ行ってくれるように仕向けようという魂胆も。
でも…出鼻をくじかれた。
チャイムを鳴らしても反応が無いから自分で鍵を開けて入る。玄関横の仏間の襖が閉まってるから、母が仏壇の前でお参りしてるのが解った。
何回も鳴るように設定したドアチャイム(親機と子機でちょっとずれた二重奏)が響き渡る家の中…さて、ここで私が襖を開けると 母は死ぬほど驚くのよね。
もう一度、玄関へ出てチャイムを鳴らしたけど、閉め切った仏間の母にはチャイムの音は届かない。
玄関のたたきで携帯で電話する。
呼び出し音が5回鳴って 母が子機をとった。
「もしもし 私。今 玄関に居るよ」
「誰?」
「私、ゆうこ」
「ゆうこ? 何だった?」
「今ね、もう玄関の中に居るからね」
「ゆうこ? 気をつけて来てね」
「うん、だからもう玄関に居るってば」
子機は親機よりも聞き取りにくい。
母は仏間に居ると台所の親機の音が聞こえないから『着信を知らせるため』だけに仏壇の横に子機を置いたのが3年程前。
でも母は「電気代の無駄」と言ってコンセントを抜いてしまう。
私がさしておくと、次に行った時にはまた抜かれてる。
母に見えない場所に子機を移動させたら それも探し出して、抜いたコンセントを綺麗に巻いてあった事もある。いたちごっこは、ずっと続いた。
「子機は聞きとり難いから使いたくない」と言うので「これは電話が鳴ってるよって知らせる為ものだから、鳴ってるのに気づいたら台所まで行って親機をとればいいよ」と何度も説明したけれど、鳴ってるのに気づくと どうしても子機をとってしまう。
聞き取れないから「一度切って、台所へ行って待ってて。もう一度電話するから」と 子機から親機への切り替えができない母の為にひと手間かける。
ところが、そういう時、すんなり次の電話がかけられた事が無い。
子機をきちんと切らず(充電台に置かないのかな)に台所に行ってしまうので、私が再ダイヤルすると話し中になってる。
母は電話が鳴るのをじっと待ってるだろうな…。
お話し中調べから、大きな音を鳴らしてもらうけど、子機が切れて無い事を母は理解できない。
その後、子機が自動的に切れるか、仏間に戻った母が子機を戻した時に やっとつながる。
夜間につながらない時は、もしかして倒れてるかも…と思ったり、母が電話しようと思った時に かけられないと不安で混乱するかも…と思うから、夜道を運転して実家まで行ったりもした。
こんな事は何度もあった…。母に電話ひとつするのにも これだけのストレス。
ところが、最近はなぜか仏間の子機だけは ちゃんとコンセントにつないだままになってる。(寝室兼テレビの部屋は 寝る時だけコンセントをさすらしい)
母の頭の中で仏間の子機だけは認める事ができたんだろうね…その理由が知りたいわ。
話は戻ります。
玄関から横の部屋への電話は、結局 話が通じないまま。
しばらく立ってると襖が開き(私の電話で何だろう?と思ったんでしょう)顔を出した母が 「はぁ~!」と胸を押さえて驚きの顔。
だから…びっくりさせないように気を遣ってるのにぃ。
ここで最初の「うぅぅ…」
おかずを持って台所に行くと、なんと! 先週 箱に入れた薬が全部 そのまま残ってる。
「お母さん、薬 1回も飲んでないじゃん」思わず大きな声で言った。
その瞬間…言い終わるかどうかのタイミングで「飲んでるよ!」と怒り顔の母。
「飲んで無いじゃん。これ全部 残ってるもん」と これも大声で言う。(まだこの時点では私は怒ってなくて、笑顔を浮かべながら)
ここからは、母は私の言う事が全部聞こえてるわけじゃないから、雰囲気や思い込みで解釈して 自分の言いたい事を言い出す。
母「薬はね、いつも余分に出すの! あんなにたくさんのめないわ!年寄りだからお金を巻き上げようとして、たくさん出すんだから!」
「2週間分しか出て無いよ」手振りも交えて大声で。
母「数えたわけじゃないでしょう!」
「数えたぁっ。ちゃんと14個ずつあったのっ」
母「一日に一回飲むだけだよ! 1週間でそんなに減るわけないでしょ!」
「毎日飲んでたら もう7個ずつしか残って無いはずなのに、14個 残ってるのっ!」
こういう時は書いても無駄。
私も聞こえないから かえって怒りを表現しやすい。
母「じゃあ、全部飲めばいいんでしょ!今から全部 飲むわ!」 …悲しくなる。
母「お母さんは いつ死んでもいいんだから、もうこんな薬なんか飲まなくていいの!」
「死ぬならいいよ。物忘れ病がどんどんひどくなるの!」
母「もう聞きたくないっ!! お母さんは みんなに迷惑かけないように頑張ってるんだから! ゆうこがそういう事を言うと、余計に頭がおかしくなる」…それはあるかも。
母「どうして信じてくれないの!? お母さんがちゃんと飲んでるって言ってるのに!」
ハッとした。
母は いつか飲んだ時の記憶が残ってて、それは今朝であり、昨日であるわけで、ちゃんと毎日飲んでるんだよね。
それを「飲んでない」と指摘されると、いたたまれないよね。
母「ここに薬入ってた?」 小さなケースを指す。
以前、私が一日分ごとにケースに小分けしたけれど、それでも3日に1回は飲み忘れて「小さいケースから出すのが面倒」と言うので、それも撤収した。
その時、一つだけ残しておいて、母が言うには「朝、飲んだら忘れないように次の日の分を入れておく」そうな。
「朝、飲んだらそのまま空にしておいて、夜、明日の分を入れた方がいいよ。そうすれば、飲んだかどうかわかるから」と言っても
「お母さんのやり方でやらせて!」と これも数回の喧嘩の末に 私が諦めた経緯がある。
そして今回は空のケースを指して「その中に入ってる? 入ってないでしょう! 朝飲んだ証拠!」と言い張る。
前に自分が言った事を忘れてるから矛盾にも気付かないんだよね。
このまま今日も早帰りか…と一瞬思ったけど、不思議に心が落ち着いた。
持ってきたぶり大根とご飯を温め、ほうれん草のおひたしを並べ
『ぶり大根 好きじゃないだろうけど頑張って食べてね。この後 ぜんざいするから』
「好きだよ~」 あら?そうなの? 魚は嫌いなはずだけど…苦笑。
「美味しいわ~」と言いながら食べ、ぜんざいを出したら
「うあぁ~ こんなの何年ぶりかしら!」…鏡開きの時も喜んで食べたじゃん(笑
『とりあえず、これ飲んでね』と 食後に薬をだしたら、すんなりのんだ。
物忘れは こういう時は便利。
毎日欠かさず服用させる事はあきらめた。(優等生患者の私には苦渋の決断)
でも…一度ものまないのは…ねぇ。
帰りの車の中では、ちょっぴり自己嫌悪。
結局のところ、やっぱり私は母を追い詰めてるだけなんだろうなって。
「あらま~1週間 まるまる飲み忘れてるか~」と笑い飛ばせるようになれないとね。
弟桃から母への年賀状には「素直で可愛いおばあちゃんだと思っていますよ。長生きsてくださいね」と書かれてた。
どこが素直で可愛いよ~?
これが『認知症患者さんの身内と外部への対応の違い』なんだよね。
母が一番安心して自分をさらけ出せる相手は私…ってわけよね。
昨日も あれこれ雑用を片づけてノートテイクして、損な役回りだこと。