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2011年8月17日 (水)

女神の目線

 月に一度のケアマネさんの面談の日。

 昼前に実家に着くと、いつものように昼食の準備と並行して、いろんな作業をやっつける。

 薬のチェックとセット・デイサービス連絡帳チェック・郵便物チェック…

 そして冷蔵庫をチェックすると…先週 私が用意した料理が入ったままだった…。

 10日に、10日の夜の分と11日の昼の分を入れた。

 冷蔵庫の扉に【10日 ①ご飯 ②茄子の煮物 ③… ④… 11日 ①カレーライス】と大きく書いた紙をはり、冷蔵庫の中のそれぞれの器にも①ご飯 ②茄子の…とメモを貼り付けておいたのに 11日①カレーライスが、そのまま…。

 もうね…がっかりする。 でも言っても仕方ないから『これ捨てようよ』とだけ書く。

「え~もったいない。まだ食べられるよ」

『11日って書いてあるでしょ。もう古いから食べられないよ』

 これでもうイライラする。

 ケアマネさんが来てくれて、いつものように明るく母に声をかけてから

「母桃さん、最近 痩せられませんか?」と私に。

 最近、食が細い事を話すと

「暑いせいもあるかもしれませんが、ストレスを溜めてらっしゃるんじゃないかと…」

 ?!

「以前は、デイサービスにいらっしゃる間中、母桃さんは、ずっとにこにこされてたんだけれど、最近、顔がこわばってる事が多くて…職員が話しかけると また笑顔になられるんだけれど…」

『ケアマネ/痩せられたけれど、デイサービスでストレスがある?』

 すると母が語り出した。

「私は施設でお世話してくださる人が、いつも献身的にやってくださってるのを見て、何かお手伝いしたいと思って できる事はするんだけど、一緒に居ても 箸も取らない人がいて…。誰かにしてもらうのを当たり前のようにしてて。男性でも『ありがとう』と言ってくれるのに。その人を見てると 腹が立ってしまって」

 この話は以前から何度も聞いていた。

 そのたびに『デイサービスを利用してる人は病気の人も多いから、多分、誰かが何かしてくれてるのも分かって無いんだよ。だから悪気は無いの。職員さんが喜んでくれれば それでいいでしょ?』と なだめていた。

 そしてここ一ヶ月くらい「休む」と言う事が増え始め「もうやめる」とまで言い出した。

 でもその1分後には「お母さん、あそこへ行くのが生き甲斐。若いお兄さん(職員さん)が面白くて優しいし」と弾んだ声で言うので、私は、しょうがないなぁ…また言ってる…くらいにしか思ってなかった。

 でも 今日 ケアマネIさんを交えて話すうちに、もっと深刻な状況だった事がわかった。

 私は、母の言う腹の立つ人を「認知障碍で、いろんな事がわからなくなってる人達」と思ってたけど、どうやら母はある特定の人の事を言っていたらしい。

 母の話と、Iさんの補足(母には聞こえない)で、分かったのは…

 母がその人にあれこれ話しかけたり お世話したりしてもずっと無反応だって事。

 母はそれを「無視された」「私を嫌いなんだ」と感じてしまったって事。

 それでも なんとか仲良くなろうと努力して、そのたびに想定外の対応をされて、母は傷ついてた。

「ずっと我慢されてて、お辛かったと思いますよ」

 私、母がそういうストレスを抱えてるなんて思ってもみなかった。

 母は元来、穏やかで誰とでも仲良くする人。威張ったり意地悪したり自己主張したりしない。相手から見ても『無害な人』だから、ひどい対応をされる事もほとんど無いんじゃないかな。

 経験した事のない冷たい対応をされて、すごく傷ついたんだろうな。でも私には、そこまでは言わなかった。

 子どもが学校でいじめられても親には言いたくないのにも似てるのかもしれない。

「その人を見るだけで嫌な気持ちになる」と。

 そうだよね…母にとっては「意地悪な人」なんだから。

 居心地の良い場所に意地悪な人がいるばかりに、どんどん行きたくなくなってたんだ…。

 でも行かなきゃ…と思って 色々辛かったんだろうな。

 なんと母は自分の中で勝手に「今週でやめる」と決めてた。

 デイサービスでぬり絵で作ったカレンダーの火・金にマル印をつけてあるのが、12日以降はついてない。

「もう行かない」決意の表明だったんだね…。

 15日に義母と食事に行った帰りも「明日 休みたいんだけど」と言う母に「そんなに何度も休んだら、デイサービスへ行きたいのに順番待ちしてる人(母が友人を誘ったら順番待ちだと断られたって言われたと言うので^^)に申し訳ないよ」と諭したので、16日は一生懸命頑張って行ったんだね…。

 そしてIさんと私に

「昨日、最後のつもりで、私 その人に謝りに行ったの。『私 何か気に入らない事したかもしれないけど許してね』って言ったんだけど、やっぱり何も言ってくれなかった」と。

 そんなに思いつめてたのか…。

 私はIさんが「その方は ご病気で、母桃さんが何を言ってるのかも理解してないんですよ」と言うかと思ったんだけど

「まあ~!」「そうなんですか~」と頷いて聞くのみ。

 そして母はそれで十分満足。

 私は そこで「相手は病気だから仕方ないんだよ」って説明しないではいられないんだよね。

 まだまだ勉強だわ。

 そしてIさんから思いがけない言葉が。

「その方は おうちの事情で8月いっぱいで、よその施設に移りますよ。だから母桃さん、これからも来てくださいね」

 ノートテイクすると、母は「8月いっぱい」はスルーして

「じゃあ、もう来ないの?! こんな事を言っては悪いけど…嬉しい!! 万歳してデイサービスへ行けるわ!!」と にっこにこ。

「その人の事を嫌いな自分が嫌で、なんとか仲良くできますようにと毎日 祈ってたんだけど、どうしても無理で…でも 祈りがIさんに届いたんだねぇ」(母も仏教徒)

 …うん、その真摯な祈りがこういう形で通じたのもあるかもね。

 私は母から何度も聞かされていたのに『認知症を患った人達の行き違いだから仕方ない』としか思ってなかった。

 母の辛さやストレスまで考えが及ばなかった。

 ケアマネのIさん、ほんとによく見ててくれました。

 母と二人で合掌して見送りました。

 以前の母と私は、お互いのこういうかっちょ悪い事や情けない事も 何でも話せた。

 そして時にはなだめたり、慰めたりして、二人で消化してきた。

 でも母は、もう私がそういう相手には、なってくれないって分かってしまってるんだろうね。

 昔のように 何でも話せて、寄り添える娘に戻らなきゃ。

 

 さて…その人、8月いっぱいは居るんだけど、母はそこは覚えてないだろうな。

金曜日にうきうき出かけて「まだ居る!?」って びびっちゃうかもね。

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